高校入試と定期テスト

受験情報

この記事では「中学校で行われる定期テスト結果は千葉県公立高校入試の合否に影響するのか」について「どの程度の影響があるのか」「高校ごとの評価・選抜方法の違い」に注目し解説します。

中学校での教育の根幹は「生徒ひとりひとりが将来のために『生きる力』を育むこと」だと思います。決して「受験」のために中学校教育があるわけではありません。ですから入試に影響があってもなくても、学校で主体的に学び、定期テストに臨むことは大切です。とはいえ「調査書」という形で中学校での学習状況が数値化され、高校入試に一定の影響があることは事実ですし、誤解が多い内容でもあります。できる限り客観的な記載を心がけますが、様々な捉え方ができる事象について「塾」の立場で書かれた記事であることを前提に読み進めて頂ければと思います。

POINT

「調査書」の得点、という形で入試の合否に影響します。

千葉県公立入試において各中学校が作成する「調査書(いわゆる内申書)」は数値化され、合否に影響を与えます。各学年の学習の記録が数値化されますので、中学1年生のときの定期テストの結果もその評価の中に含まれ、合否に影響を与えます。

以下、具体的にどのような影響があるのか「調査書のしくみ」と「高校ごとの違い」に注目して説明していきます。

POINT

「教科の学習の記録」が得点化されます。

「受験高」によって「調査書」の扱いが異なります。

各中学校が作成する「調査書」については、千葉県教育委員会がHP上でその書式を公開しています。

調査書(千葉県教育委員会HPリンク)

「教科の学習の記録」から始まり「総合的な学習の時間の記録」「出欠の記録」「行動の記録」「特別活動の記録」「部活動の記録」「特記事項」「総合所見」と中学校における様々な活動の様子が記載できるようになっています。この中で最も影響度が高いのが「教科の学習の記録」です。

「教科の学習の記録」では各学年、9つの教科について「5・4・3・2・1」の5段階で評定が記載されます。一般的な「通知表」のイメージで学年を通した「通期」の評定が記載されます。「オール5」を取ると各学年の合計評定は45点。3学年合わせた合計評定は135点です。

この評定は定期テストの結果だけで決まるものではありません。授業に参加する姿勢など総合的な取り組みが評価されますが、定期テスト結果が客観的な指標の一つであることは間違いありません。定期テストでのがんばりは「学力の向上」という直接的な影響に加えて「調査書の評定」という間接的な形で入試に影響しているのです。

そして、この調査書がどの程度合否に影響するかは「受験する高校によって」異なること、「部活動」や「生徒会活動」など諸活動の扱いも高校によって異なることはあまり知られていませんので、以下、その部分をご説明します。

POINT

千葉県公立高校入試の選抜方法は高校によって異なります。

中学校の成績(調査書)の扱いも高校により異なります。

千葉県公立高校入試は何点満点でしょうか? この質問に正確に答えることは簡単ではありません。

「国数英理社5科目の試験だから500点満点ではないか?」そうではありません。「500点満点の試験に調査書135点を加えるから635点満点ではないか?」実はそれも正確ではありません。

千葉県公立高校の合否は、次の3つの得点の合計点で決まります。

これだけであればシンプルなのですが、ポイントは①②③の全てについて「何点満点とするかを高校ごとに変えられる」という点です。全ての高校について説明するのは難しいため、特徴のある3つの高校を例にご説明します。なお、高校ごとの「選抜・評価方法」については各高校のHPに公開されています。

地域トップ高の例(木更津高校普通科)

POINT

一般的な選抜方法

合格ボーダー付近では学力検査重視

内房地区の地域トップ高、木更津高校(普通科)は、学力検査500点、調査書135点をそのまま合計します。学校設定検査の作文も10点と比重が小さいため比較的スタンダードな選抜方法と言えるでしょう。

令和6年度 選抜・評価方法(木更津高校HPリンク)

 500点満点。各教科100点満点の合計点。

 135点満点。「教科の学習の記録」をそのまま数値化。

 「作文」を実施。10点満点。

このように木更津高校の入試において満点は「645点」となります。調査書については評価者の主観が含まれる評定であり、その是非が議論されることもありますが、中学校の先生方もできる限り客観的に生徒たちの評価をされています。当日の学力検査が500点分、中学校3年間の学習の取り組みが135点分という比率は、よく考えられたバランスではないかと思います。

なお、いわゆる合格ボーダー付近では学力検査の得点を1.5倍にすることで相対的に調査書の比重が低くなり、より「学力検査重視/本番重視」の選抜方法となっています。

ア)募集定員の80%まで

 上記の通り645点満点の総得点により順位をつけ合格者を決定。

イ)募集定員の残り20%

 学力検査の得点を1.5倍した895点満点の総得点により順位をつけ合格者を決定。

この後に説明する千葉高校もそうですが、いわゆる難関高と言われる高校ほど、調査書の比重を低め、当日の学力検査の比重を高める傾向があります。

もっと詳しく

木更津高校の「調査・選抜方法」各項目についてさらに詳しく説明します。

40点未満の教科がある場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「教科の学習の記録」について、評定1または未評価の教科がある場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「出欠の記録」について、各学年20日以上の欠席がある場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「行動の記録」について、○が一つもつかない場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「部活動の記録」「特別活動の記録」「特記事項」「総合所見」について、特に優れた内容を「総合的に判定する際の参考にする」との記載があります。

10点満点の内訳は2人の採点者が「字数」「内容」を2段階で評価します。

①②にある「審議の対象とする」という表現はかなり曖昧です。合否判定にどの程度影響するか正確なところは分かりません。条件を満たしてしまうと合格できないのか、合格ボーダー付近の場合に影響がでるのか。いずれにしてもこの条件を満たさないよう留意しておく必要があります。

②の「総合的に判断する際の参考とする」というのもかなり曖昧な表現です。

ただ、部活動や特別活動について明確に得点化する方針を示している高校もある中で「得点化せず」「参考」とするわけですので、影響は小さく、合格ボーダー付近での「参考」ではないかと考えられます。

③の作文については配点が少ないことと、採点の観点も2つ、段階も2段階、ということで「点差が付きにくい」検査と言えると思います。まずは指定された条件(文字数)を守ること。その上で問題の意図を汲み取り書くことができれば、大きなマイナスにはならないはずです。

また、この記事では割愛しましたが、木更津高校には「理数科」があり、「普通科」「理数科」のいずれかを第一志望、もう一つを第二志望として出願することができます。その際のいわゆる「スライド合格」についても「選抜・評価方法」内に記載されています。

なお、木更津高校(普通科)の「令和6年度 選抜・評価方法」の冒頭に「期待する生徒像」が記載されています。

次の全てを満たす生徒
 ア 学習成績が優秀で、自ら課題を見いだし主体的に学習に取り組み、その成果が期待できる資質のある者
 イ 高校生活全般にわたって積極的に取り組み、自らを高めようとする意欲のある者

伝統ある地域トップ高にふさわしい内容で、学力検査に比重を置いた実際の評価・選抜方法もこの期待する生徒像に沿ったものと言えるでしょう。

人気進学高の例(千葉南高校)

POINT

一般的な選抜方法

部活動や特別活動の記録も得点化される

千葉市の人気進学校、千葉南高校も比較的スタンダードな選抜方法です。先ほどの木更津高校との大きな違いは調査書に記載された「部活動・特別活動の記録」および「特記事項」が上限30点で得点化される、ということです。

令和6年度 選抜・評価方法(千葉南高校HPリンク)

 500点満点。各教科100点満点の合計点。

 165点満点。「教科の学習の記録」はそのまま数値化され135点満点。

 「部活動の記録」「特別活動の記録」「特記事項」について上限30点の加点。

 「面接」を実施。20点満点。

このように千葉南高校の入試において満点は「685点」となります。調査書に上限30点の加点があるのが特徴で、「評価・選抜方法」内に明記されている「英検・漢検・数検 準2級以上」については確実に数点分の加点があるでしょう。また「部活動」や「生徒会活動」についても活躍の度合いにより加点があるはずです。当日の学力検査がボーダー点付近になった場合は、この加点の有無で合否が分かれることも起こると思います。また、学校設定検査の面接も配点が20点ありますので、生徒間の差も付き、ボーダー付近での影響があるはずです。

全体として、「学業以外の中学校生活の努力もプラス評価をする」という方針が得点化されることで、調査書の比重がやや高くなっています。合否を分ける最大の要因が試験当日の学力検査であることは間違いありませんが、中学校3年間の諸活動が合格を後押ししてくれると考えると嬉しい生徒も多いと思います。

もっと詳しく

千葉南高校の「調査・選抜方法」各項目についてさらに詳しく説明します。

特別な記載はなく、500点満点の得点がそのまま使用されます。

「教科の学習の記録」について、評定1または未評価の教科がある場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「出欠の記録」について、各学年30日以上の欠席がある場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「行動の記録」について、○の個数が2個以下の場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「部活動の記録」「特別活動の記録」「特記事項」については上限30点の加点があることが明記されています。

「総合所見」について、特に優れた内容を「総合的に判定する際の参考にする」との記載があります。

受検者4~5名・評価者2名の集団面接形式で実施され、検査時間は1グループ約 15 分です。

20点満点の内訳は、2人の採点者が「志望動機」「高校生活への意欲」「質問に対する応答」「面接に臨む態度」の4項目について3段階で評価したものになります。

①②にある「審議の対象とする」という表現はかなり曖昧です。合否判定にどの程度影響するか正確なところは分かりません。条件を満たしてしまうと合格できないのか、合格ボーダー付近の場合に影響がでるのか。いずれにしてもこの条件を満たさないよう留意しておく必要があります。

②の「上限30点の加点」については、「英検・漢検・数検 準2級以上」や「部活動、生徒会活動、学校行事、その他の活動等で特に積極的に取り組んだと認められる記述」に加点があることが読み取れますが、「それぞれ何点分なのか」「部活動や生徒会活動でどんな取り組みや実績を残せば加点されるか」は読み取れません。

そもそも「この活動をすれば入試でプラス何点」という発想は諸活動の趣旨から外れるものだと思います。入試での加点を目的に諸活動に取り組むという姿勢ではなく、中学校3年間で様々な活動に取り組んだことが合格に向けた一押しをしてくれる、という気持ちで臨んでほしい。ひょっとしたらこの30点について詳細な記述がないことは、そういう思いの現れかもしれません。

なお、「総合所見」の「特に優れた点について総合的に判定する際の参考にする」という記載については「得点化せず」「参考」とするわけですので、影響は小さく、合格ボーダー付近での「参考」ではないかと考えられます。

③の面接については、集団面接という形式と検査時間を考えると、ひとつひとつの項目を深く掘り下げられる可能性は低いと思われます。評価は「優れている」「標準的である」「問題がある」の3段階で行われますので、受験生の中で結果にやや差がつく可能性もあります。事前に準備や練習をしておくとよいと思います。

千葉南高校の「令和6年度 選抜・評価方法」の冒頭に「期待する生徒像」が記載されています。

本校への志望理由が明確で、人物に優れ、入学後も高い目標と旺盛な向上心を持って主体的に学校生活に取り組み、かつ、次のア又はイのいずれかを備える生徒
 ア 学習成績が特に優れている生徒
 イ 学習成績に優れ、部活動、生徒会活動、学校行事等に積極的に取り組む生徒

実際の選抜・評価方法もこの期待する生徒像に沿った形になっていると言えるでしょう。

県内トップ高の例(県立千葉高校)

POINT

調査書の影響が少ない学力重視の選抜方法

合格ボーダー付近ではさらに学力検査重視

県内最難関公立高校、県立千葉高校については明確に学力重視の選抜方法になっています。調査書を通じて中学校3年間の学習の記録も得点化されますが、その比重は低く抑えられています。

令和6年度 選抜・評価方法(県立千葉高校HPリンク)

 500点満点。各教科100点満点の合計点。

 67.5点満点。「教科の学習の記録」に0.5を乗じて影響度を半分に減じています。

 県が作成する「思考力を問う問題」を実施。100点満点。

このように県立千葉高校の入試において満点は「667.5点」となります。調査書で数値化された中学校3年間の「教科の学習の記録」は合否に影響を与えるものの、半分の67.5点満点となっています。

また下記の通り、いわゆる合格ボーダー付近では学力検査の得点を1.5倍にすることで更に調査書の比重が低くなります。

ア)募集定員の80%まで

 上記の通り697.5点満点の総得点により順位をつけ合格者を決定。

イ)募集定員の残り20%

 学力検査の得点を1.5倍した917.5点満点の総得点により順位をつけ合格者を決定。

調査書の得点が半分になることの影響は小さくありません。

仮に「3年間オール5」の受験生と「3年間オール4」の受験生がいた場合で考えます。一般的な公立高校では調査書にて「27点」の差がつくことになりますが、県立千葉高校ではその差が「13.5点」まで圧縮されます。「学力検査」の満点が500点「思考力を問う問題」の満点が100点であること、合格ボーダー付近で「学力検査」の得点が1.5倍されることも併せて考えると、県立千葉高校の評価・選抜方法は「調査書の得点より試験当日の検査を重視している」と言えるでしょう。

「思考力を問う問題」については、試験時間60分、100点満点の国語・数学・英語3科の融合問題が出題されます。全県共通の「学力検査」と比べると難易度の高い問題の比率が高く、時間内ですべての問題を解き切るのがかなり難しい試験です。

全体として、基礎基本の定着に留まらず、発展的な内容まで踏み込んだ学習が必要な入試になっていると言えるでしょう。

もっと詳しく

県立千葉高校の「調査・選抜方法」各項目についてさらに詳しく説明します。

特別な記載はなく、500点満点の得点がそのまま使用されます。

「教科の学習の記録」について、評定1または未評価の教科がある場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「出欠の記録」について、3年間の欠席が60日以上の場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「行動の記録」について、○が1つもない場合は「審議の対象とする」との記載があります。

「上記以外の記録」「特記事項」「総合所見」については、特に優れた内容を「総合的に判定する際の参考にする」との記載があります。

60分、100点満点の検査ということのみ記載されています。

①②にある「審議の対象とする」という表現はかなり曖昧です。合否判定にどの程度影響するか正確なところは分かりません。条件を満たしてしまうと合格できないのか、合格ボーダー付近の場合に影響がでるのか。いずれにしてもこの条件を満たさないよう留意しておく必要があります。

②については他の学校に比べ記載が少なく、「部活動」「生徒会」「検定」などの言葉も見られません。「教科の学習の記録」の得点を半分にしていることと合わせて、調査・選抜方法に再難関高としての考え方が反映されているように感じます。

③の思考力を問う問題について、現状では「一定の読解力(問題で求められていることを見抜く力)が必要な問題を、短時間でどれだけ正解できるか」試す側面が強い検査という印象を受けます。私見にはなりますが、県立千葉中など千葉県公立中高一貫校の適性検査と似た方向性になっている印象です。始まったばかりの検査ですので、年を追うごとにそれまでの受験生の結果が蓄積され問題の練度が上がってくるのではないかと考えています。

千葉県の入試制度はこの20~30年で何度か大きな変化がありました。

これも「塾」視点での印象ですが、県立千葉高をはじめとする難関高の合格者をどう選抜するか、伝統あるトップ校の文化をどう継承していくか、さまざまな検討や試行錯誤があったのではないかと思います。

「特色化選抜」という高校独自問題の実施と廃止、前期後期制の導入と廃止(当初は前期選抜の難易度が後期選抜よりかなり高く設定されていました)、そして現在の「思考力を問う問題」と「学力検査」の難易度(学力のある生徒の間でも差が付きやすい問題が各教科に散見されます)。

入試問題や合格を勝ち取ってきた生徒たちを見ているいと、千葉高校をはじめとする難関高が求めているのは、「基礎的な知識を積み重ねる努力を怠らない姿勢に加え、自ら考え、他者(問題)の意図を汲み、考えを自分の言葉で伝えられる力」を持った生徒なのだろうな、と感じています。

県立千葉高校の「令和6年度 選抜・評価方法」の冒頭に「期待する生徒像」が記載されています。

次の全てを満たす人
 ア 本校の教育理念を理解し、本校を特に強く希望すること。
 イ 基礎・基本を身に付け、思考力・応用力に優れていること。
 ウ 知的好奇心と向学心を持ち、自主的精神に富んでいること。

千葉高校の教育理念については千葉高校HPの「学校概要」などで知ることができます。千葉高に興味のある生徒や保護者のみなさまは、ぜひ一度ご覧ください。特に「学校長挨拶」の中に書かれている<本校を志望する皆さん・保護者の方々へ>には、先生方、在校生、卒業生の想いが詰まっているのではないかと思います。

中学校の定期テストの結果は「調査書」内の「教科の学習の記録」の評定を付ける際の指標として、千葉県公立高校入試の合否に影響します。難関高校においては「調査書」の点数が総得点に占める比重が低くなる傾向があるものの、中学1年生のうちからしっかり中学校での学習に取り組むことが高校受験の合格を後押ししてくれることは間違いありません。

しかし、千葉県の公立高校入試においてもっとも大切なのが入試当日の「学力検査」であることも事実です。定期テストの出題方針や難易度は中学校によって異なりますので、定期テストだけを意識していると「定期テストではそれなりの点数がとれるけれど、入試を見据えた実力テスト形式の問題では点数が伸びない」ということも起こりえます。自身が通う中学校の定期テストの傾向を把握し、不足している部分があれば早めに対策を始めましょう。

定期テストの中学校ごとの違いについては、こちら【定期テストの平均点】の記事で解説しています。よろしければ併せてお読みください。

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